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悪意の受益者 当事務所 裁判事例

2020/02/13 悪意の受益者 当事務所 裁判事例

 

第1  悪意の受益者について

任意の支払いとは貸金業の規制等に関する43条1項、3項は法17条1項各号に掲げる事項についてその契約の内容を明らかにする書面(以下契約書面という)さらにその債権の全部又は一部について弁済を受けた時は、その都度、受領金額及びその利息、賠償額の予定に基づく賠償金又は元本への充当額等、法18条1項各号に掲げる事項を記載した書面(以下受取証書という)を当該弁済した者に交付しなければならないものとして(法18条1項)、債務者が貸し付けに係る契約の内容又はこれに基づく支払いの充当関係が不明確であることなどによって不利益を被ることがないように貸金業者に契約書面及び受取証書の交付を義務ずける反面、その義務が遵守された場合には、債務者が利息又は賠償として任意に支払った金銭の額が利息制限法1条1項又は4条1項に定める利息又は賠償額の予定の制限額を超えるときにおいても、これを有効な利息の又は賠償金の債務の弁済とみなすとこととしている(法43条1項、3項)以上のような法の趣旨に鑑みれば、債務者が貸金業者に対してした金銭の支払いが法43条1項又は3項によって有効な利息又は賠償金の債務の弁済とみなされるには、契約書面及び受取証書の記載が法の趣旨に合致するものでなければならない(最高裁平成22年1月22日)

しかしながらリボルビング方式について判断した最高裁は17条、18条書面については厳格説を採用するので被告の主張はみとめられない

17条書面として交付された書面に法17条1項所定の事項のうちで記載されていない事項があるときは、法43条1項の規定の適用要件を欠くと言うべきである

(最高裁平成平成15年(オ)第386号、同年(受)第390号同16年2月20日)そして、仮に、当該貸付に係る契約の性質上、法17条1項所定の事項のうち、確定的な記載が不可能な事項があったとしても、貸金業者は、その事項の記載義務を免れるものではなく、その場合には、当該事項に準じた事項を記載すべき義務があり、同義務を尽くせば、当該事項を記載したものと解すべきであって、17条書面として交付された書面に当該事項に準じた記載がないときは、17条書面の交付があったとは認められず、法43条1項の規定の適用要件を欠くべきと言うべきである。

・・・

個々の貸付の時点での残元利金について、最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済する場合の返済期間、返済金額等を17条書面に記載することは可能であるから、上告人は、これを確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずるものとして、17条書面として交付する書面に記載すべき義務があったというべきである。そして、17条書面に最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済する場合の返済期間、返済金額等の記載があれば、借主は、個々の借り入れの都度、今後、追加借入をしないで、最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済していった場合、いつ残元利金が完済になるのかを把握することができ、完済までの期間の長さ等によって、自己の負担している債務の重さを認識し、漫然と借入を繰り返すことを避けることができるものと解され、確定的な返済期間、返済金額等にの記載に準じた効果があるということができる。前記事実関係によれば、本件基本契約書の記載と本件各確認書等の記載とを併せても、確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載があると解することはできない。したがって、本件各貸付については、17条書面の交付があったとは認められず、法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。(最高裁平成17年12月15日)

本件において被告の主張についてこの判断を当てはめてみるとやはり17条書面にに準ずる書面を交付したとはいえないものである。例えば、返済期間がないよことにより返済総額を認識することはできず、いつ残元利金が完済になるのかを把握することはできず、完済までの期間の長さ等によって、自己の負担している債務の重さを認識し、漫然と借入を繰り返すことを避けることはできないのである。

被告は少なくとも、平成10年6月16日以降は17条所定の要件を満たした文書を交付していると自認しているが、仮にそれが17条所定の要件を満たしているとしても、それ以前はその要件を満たしていないのであるから悪意の受益者が善意の受益者に変換することはあり得ないのである

よって、被告の主張にもかかわらず、厳格説を採用する最高裁においては17条書面の交付があったと認められず、法43条1項の規定の適用を欠き、被告は依然として悪意の受益者である

第3、平成18年判決以降における「特段の事情」について

被告は、原告が、平成18年判決を認識すれば、返済期日に制限超過利息を含む約定利息を支払わない限り、期限の利益を喪失するとの誤解をすることがないため、被告としては、原告が期限の利益喪失特約の存在により事実上強制されて制限超過利息を支払ったとは想定できず、平成18年判決以降においてもなお、被告には特段の事情があったといえると主張している

しかし、原告は期限の利益喪失特約の存在により事実上強制されて制限超過利息を支払ったものではないと被告が認識したことの立証はされていない

仮に、被告が上記事実を立証したとしても、その事実は「特段の事情」にはあたらない

借り手としては、平成18年判決を認識できたとしても、実際にいくら支払えば期限の利益の喪失を免れることがわからないのである

本件において、被告が、原告に対して利息制限法に基づく利息のみを支払えばよいことを十分に主張立証はなされておらず「特段の事情」は認められない

 

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