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平和の五要件

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2025/01/22 平和の五要件

 

平和の五条件

国際政治・関係論の領域では、古くから「民主的平和論(Democratic Peace Theory)」という理論があった。1795年に出版されたイマヌエル・カントの「永遠平和のために」を源流とする理論で、民主主義(共和制)を採用している国同士では、戦争が起きにくいことを指摘した理論だ。

当時プリンストン大学のマイケル・ドイル教授が現代に復活させものを高橋洋一先生が教わった理論で、いまや国際政治・関係論ではもっとも法則らしい法則とみなされている。

カントは「民主主義」「経済的依存関係」「国際組織への加入」の3つが戦争を防ぎ、平和を増進するという考え方を提示した。以下の図はこの考え方を図示したもので、これをカントの三角形という。

 

この三角形のうち、民主主義と平和(戦争)との関係の部分が「民主的平和論」として知られている部分だ。

この理論によれば、民主主義を採用していない独裁国家の方が、民主主義国よりも戦争を起こしやすいとされる。

アジア地域においては、民主主義を採用せずに公式に共産主義や社会主義を標榜している国が未だ4カ国あり中国と北朝鮮、さらにベトナムとラオスである

しかし、このうちもっとも注意を要するのは大国である中国である。

なお、カントに端を発する上記民主的平和論については、過去、民主主義の定義が曖昧だとか、例外が多いという批判があった。しかし、ジョン・R・オニールとブルース・ラセットが膨大な戦争データを平和の五条件 1 平和の五条件 1平和の五条件 1使って実証分析をしたところ、「民主主義国家同士はまれにしか戦争をしない」という命題は正しい、という結論が出て、民主的平和論は正しいことが証明された。その研究の集大成が、両氏にによって2001年に出版されたTriangulating Peace: Democracy, Interdependence, and International Organizationsという本である

同書では、前述のカントの三角形だけでなく、従来唱えられてきたそれ以外の国際政治・関係論の考え方も統合して整理しており、さながら国際政治・関係論における「最終理論を打ち立てたようにも思える。それまで国際政治・関係論の世界では、大きく分けて軍事力によるバランス・オブ・パワー論を重視するリアリズムの視点と、軍事力に加えて貿易などの経済的な要素も重視するリベラリズムの視点という、2つの異なる立場が対立してきた。前述したカントの三角形は、このうちのリベラリズムを代表する考え方だ。

そうした状況下で、同書は1886~1992年の1世紀以上にわたる長期間に起きた戦争データについて、リアリズムとリベラリズムのあらゆる要素を取り入れて実証分析を行った。

結果、リアリズムの重視する軍事力に依拠したバランス・オブ・パワーの視点も、リベラリズム勢力の重視するカントの三角形の視点も、戦争のリスクを減らすためにはどちらも重要である、と言う結論が出たのだ。

同書では、軍事力に関するリアリズムの要素を次の2つに置き換えている。

  • 有効な同盟関係を結ぶこと
  • 相対的な軍事力

また、リベラリズムを代表するカントの三角形については、次の3つに置き換えている。

  • 民主主義の程度
  • 経済的依存関係
  • 国際的組織への加入

このような置き換えを行った上で数学的な処理を行ったところ、①~⑤のすべての要素が戦争を起こすリスクに影響を与えることが判明した。また、それぞれの要素がどの程度戦争のリスクをへらすのか、数字で算出することもできたという。

具体的には、①「有効な同盟関係を結ぶこと」で40%、②「相対的な軍事力」が一定割合増すことで36%、③「民主主義の程度」が一定割合舞うことで33%、④「経済的依存関係」が一定割合増すことで24%、それぞれ戦争発生のリスクを減少させるとされている。以下の図はこの関係を図示したもので、この5つの要件は「平和の五要件」とも呼ばれている。

  • の同盟関係については、同盟を結ぶことで戦争を仕掛けようとする国が思いとどまる可能性が高くなるので、対外的な抑止力が高まる。さらに、同盟を結んで同盟関係になれば、その同盟に加盟してる子に同士では戦争をする可能性はまずなくなるので、その面でも戦争のリスクを減らす。
  • の相対的な軍事力については互いの国の軍事バランスが崩れると、それまでの均衡状態が崩れて戦争が発生するリスクが高まってしまう。軍事力が優位になってきた国が「今戦ったら、勝てるんじゃないか?」と考える可能性が高まってしまうのだ。こうした開戦への誘惑を避けるには、防衛力を高めて相対的な軍事力のバランスを回復させてやるのがよい。軍事力が均衡していれば、どちらの国も戦争をしたときに耐えられない程大きな損失を被る可能性が高まるので、戦争への抑止力が高まる。古典的なバランス・オブ・パワー論の考え方である
  • の民主主義の程度については、どちらもが民主主義国だとめったに戦争はしないという、古典的民主的平和論である。一方の国が非民主国だと戦争のリスクは高まり、双方が非民主国だとさらにリスクは高まる。
  • の経済的依存関係は、貿易などで経済関係が強まっている場合は、双方が開戦した途端に双方ともダメージを負うから戦争を始めにくいというわけである。
  • の国際組織加入については、国連などの国際機関への可謬が戦争のリスクを減らすことを指している。例えば、現在ではほとんどの国が国連に加入しているが、加盟国は国連憲章を守り、自衛権の行使や軍事制裁を除き武力の行使を禁止しているから加盟国は加盟前より戦争をしづらくなっている。

「平和の五要件」はいずれも戦争リスクを低下させる働きがあるのだから、①~⑤のすべての要素を過不足なく満たさなければならない。①~③のリアリズムの視点も、④~⑤のリベラリズムの視点もどちらも重要である。ただし、中国や北朝鮮の場合は非民主国であり③の民主主義が最初からないから③以外の要素が特に重要となる。

 

 

高橋洋一 図25枚で世界基準の安保論がスッキリわかる本 から引用

 

 

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